窓が作り出す心象

みなさん、こんにちは!
くうねる・サンダンスです。

窓から見える景色で心から美しいと感じたことは、今までに1回しかありませんでした。それは30年ほども前のことです。信州は中山道の山奥に、奈良井宿というこじんまりとした宿場町があります。僕はそこがとても好きで、何度も訪れていました。

観光地となっていた馬籠宿ほど大きくないために、それほど観光客も訪れず信州の山奥にひっそりとたたずむ、僕にとっては心安らぐヒーリングスポットでした。その宿場町の中に、築100年以上の古民家をそのまま利用したカフェがありました。昔の民家づくりなので和室は田の字型に配置されていて、その先にはエンガワがあり外とゆるやかに繋がっています。

外に面していない和室は窓も無く、そのすすけた天井や土壁の影響もあって薄暗く、何故か気持ちも暗くなり沈んだ気分になります。そんな暗い和室の襖を開けると、隣の和室も明るくはないのですが、エンガワとの間の雪見障子のわずかなガラス窓部分から明るい緑色の光が暗い空間を切り取っていました。

沈んだ気分が一気に明るくなり、その先に希望がある様にさえ見えました。ガラス窓が緑色一色に見えたのは、その障子窓がその遥か向こうに新緑の季節を迎えた信州の山々を望んでいたからです。この山々を切り取ったような緑のわずかな明るさが忘れられず、何度もここを訪れていたのでした。

ところが先日、その当時と同じような気持ちになった景色に衝撃的に出会いました。それは仕事で土佐清水市に行った帰りに、四万十川沿いの県道で偶然立ち寄った古いうどん屋さんでした。普通、香川県民がわざわざ高知でうどん屋さんに立ち寄らないです。しかも、ちょっと失礼ながら外観からするとかなり怪しい雰囲気。

今から思うとよっぽどお腹が空いていたのかなというぐらい、普通立ち寄らない感じのお店です。ところが、恐る恐る店に入ってみるといきなり衝撃の景色です。店を入った正面がほぼ全面、古い木造校舎のような木製の格子窓になっていて、その窓から見える景色が草原の緑一色だったのです。暗い室内から見える希望の向こう側。30年前の記憶が蘇ります!

老夫婦が営んでいるそのお店は築40年とのこと。民家づくりの店内は、その外観からは想像できないぐらい手入れが行き届いていて、いい具合にレトロ感を醸し出しています。そしてその緑色のキャンバスのような窓の景色。

タンタンうどん(店の雰囲気の割にはちょっと変わったメニューもあり、これもちょっとびっくり)もとてもおいしく、本当に落ち着く空間でいつまでも居たいような気持になりました。

老夫婦曰く、景色はいいけど、この窓も古くてガタが来ている。すきま風も入ってくるし冬は寒いよとのこと。お店ならいいけど住むのには適していないですねと、自分が建築士であることを暴露して写真を撮らせていただきました。思わぬ出会いはどこに転がっているか分かりませんね。

僕の建築士としての原点かも知れない窓が作り出した心象、明と暗のコントラスト、これからも探し続けていきたいと思っています。

 

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